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2010.04.25

読売新聞「高級・和倉温泉に格安7800円旅館、仲居置かず」

本日(2010年4月25日)の読売新聞に「高級・和倉温泉に格安7800円旅館、仲居置かず」という記事が掲載されています。

年間同一格安料金の「湯快リゾート」が、和倉温泉の老舗旅館「金波荘」を通年7800円の旅館としてオープンさせる一方で、迎え撃つ老舗高級旅館「加賀屋」は、金波荘ならびの「たな嘉」を買収し、女性を意識した和風ビュッフェの旅館として1万5000円で同日にオープンさせる点がニュースになったわけです。

私の短いコメントも紹介されていますが、この件に関しては、本当はそんなに簡単には語れないのです。 実際に記者さんもこと細かく取材されていましたが、記事になると、ずいぶんはしょられてしまうのですね。 北陸(特に加賀地方)に集中して格安旅館が進出する背景には、「奉仕料制」というこの地方独特の仲居給与制度が残っているためで、仲居を使わない格安旅館が進出して、「誰かを喜ばせるためではなく、自分自身が楽しめればいい」個人客を一網打尽にしている点などは触れるスペースはなかったようです。

それはともかく、第一に、「年間同一・格安料金チェーン旅館」の事業モデルと、「これまでの旅館の事業モデル」は、まったく違います。

年間同一・格安料金を実現するためには、「通年・曜日でフラットな高稼働率」が求められます。そのためにも、いや、そのために「格安料金」が実現するのですが、一方で既存旅館の場合、「地産地消・地域での雇用」を重視しているため、「単価」を落とせなくなります。 地域のしがらみで他館より安くできないという事情や見栄もあると思いますが、単価を追い求めるあまり、稼働率はどうしても、オンシーズンと週末中心型(オフシーズンや平日が弱い)となり、季節・曜日跛行性が生まれ、料金は変動型になっていきます。

すなわち、「稼働率」や「効率」を徹底して追い求め、サービス品質や地産地消には目をつぶるか、「単価」と「地域性や品質」を追い求め、わかりやすいフラットな料金をあきらめるか、と両者は全く違うものを追う、まったく違う事業モデルなのです。

また、格安旅館は、旅行会社をまったく使わず、格安バスで大阪から送迎しています。 一方、既存旅館は、旅行会社に依存 (共存と言わねば起こられますね…笑) し、パッケージ旅行で多様な地域からの宿泊客に対応しています。 格安旅館は、ターゲットが限定的・明確であるのに対し、既存旅館はどんな客層にも対応するフレキシビリティがあります。 さて、皆さんはどちらを選びますか?

結果、誰もが、どちらも選択する可能性があると思います。 旅の目的に応じてその都度選ぶ、というのが本音ではないでしょうか。

いま旅館業界で起こっているこの問題の本質は、どちらが良い悪いではなく、あまりに 「違いに関する情報がなさすぎる!」 ことなのです。 旅館を解説する情報がなさすぎで、消費者は戸惑っているのではないでしょうか。 それは今に始まったことではなく、ただ「単価」でしか旅館を測るモノサシがないからこそ、安い旅館=悪い(消費者にとっては良い)、というバカな風潮になってしまっていると思います。

それでは、旅館の情報を誰が発信するのがよいのでしょう!?

旅行会社やネット予約会社は、自社の契約旅館のことしか考えませんし、それが当然です。

広く、あまねく、宿泊施設の特徴の情報を整理し、発信するのは、ふつうは「国」がやるべきことだと私は思います。 他の国はそうしています。 なのに、日本は、日本が誇る独自の文化としての「旅館」の違いの情報すら発信していません。 ああ、もったいない。

一刻も早く、日本旅館の違いを整理し、国は、国民に対し、あるいは海外からのお客様に対し、情報発信をすべきと思います。


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