2009.08.25
1泊2食料金の罠
外国人旅行者を獲得しようと、海外の宿泊予約サイトに旅館の客室を出してみると、最初は売れなくともある時点から売れるようになることに気づくでしょう。それは、食事を分離し、客室だけの料金で出した時です。
「安くすると売れるのだろう」。そう思われるかもしれませんが、そうではありません。「食事くらい自由に考えたい」。旅行者は直感的にそう思うからではないでしょうか。来日して日本旅館に一泊だけするならまだしも、もし連泊することになっていたら(外国人は同じ宿に連泊することも多い)、現地で調べて自由に食事を取ってみたい。皆さんも海外旅行に行ってみたら、そう考えないでしょうか。
夜遅くやっている店は少ない。当日頼まれても食事は出せない。そんな「できない理由」ばかり思いつく間は、新たな市場開拓は難しいと思います。できる体制や現地情報を整えることが、新市場開拓の第一歩です。
海外では、1泊2食のことを「ハーフボード」と言い、一般的にはパッケージツアーに組み込まれることの多い料金です。その場合、旅行会社は連泊しても似たような料理が続かないよう気をつけて手配します。ツアーで海外旅行に行かれると、そう配慮されていますよね。しかし、ツアーではなく個人旅行の場合、ホテル料金はルームチャージが標準です。GDSと呼ばれる在庫管理会社を通じて全世界の旅行会社でその部屋が売られる仕組みになっています。
ルームチャージにする理由のひとつは、ハーフボードにして、食事料金までみすみす旅行会社のコミッションの対象にすることを避けるためです。
ところが、日本旅館は、わざわざここでも1泊2食で売ろうと考える旅館が少なくないようなのです。料理が目的となる料亭旅館を除けば、常識では考えられない人の良さです。
GDS経由、旅行会社で売られると、手数料率は25%程度になることがあります。食事に25%も手数料かけるなんてもったいない!
外国人個人旅行を受けたいなら、まず料金発想を国際標準に近づけることが必要です。日本旅館の国際化を進めるうえでも、「心の鎖国」を解き、制度を改める時が来ているのです。