2009.12.31
旅はライフスタイル充実の手段
この冬、外国のお客様をお連れして、いろいろな宿を泊まり歩いてきました。
農家民宿から高級旅館まで、どこへ行っても「ファンタスティック!」(素晴らしい)と感動の連続。特に、日本人のホスピタリティと日本料理には涙を流すほど喜んでいらっしゃいました。
「井門さん。この料理なら旅館が高い理由もわかりました。」
そう言われる度に、日本人向けに1泊2食料金しか表示しない旅館のローカルルールが残念かつ悔しくてなりませんでした。外国人に誤解を与えないためにも、国際標準に合わせ、室料+食事料と、その内訳を併記すべきなのです。料金標記ルールの変更なくして訪日外国人3千万人はあり得ません。
それはともかく、彼ら、彼女たちが食事の都度に興味をもったのが料理方法。「この料理はどうやって作るのですか」。微妙な出汁の効いた吸い物に、海老真薯や茶碗蒸し。自ら覚えた「日本土産」として腕をふるってみたいのかもしれません。
ある旅館で、地元野菜のすり流しと天ぷらを題材にした料理教室を開催してみたらこれが大好評。野菜は熱を加えると甘みが増すので、冬野菜の定番のネギだって、さっと揚げてミキサーで砕き、裏ごししてスープ状に仕立てれば、飲めるほどのすり流しの完成。あるいは、柿を天ぷらにすると、不思議な果物を日本風に味わえるデザートに。日本ならではのカステラを天ぷらにしても甘みが増幅し、彼ら好みのスイーツの出来上がり。ホイップクリームを乗せて出せば、海外で売れると太鼓判まで押される始末。
「外国人だからそう思うのでしょう」。もし、そんな誤解があれば困りもの。
旅とは「ライフスタイルを充実するための手段」。「旅は癒しの手段」というレベルはとっくに終わっているのです。日本人だって、旅先でいろんな(家ではできない)体験を欲しているのです。料理レシピが欲しいというのは当たり前。それすら拒んでいたら、リピーターなど生まれません。
今大切なのは「まだ来たことのないお客様」を取り込むこと。そのためには、旅を提供する者が自ら変わらなければいけないのです。「旅館の料理教室」。そんなことから始めませんか。