5年後をイメージしよう。
最近、観光地や旅館の中期計画作りに携わる機会が増えてきました。金融機関等の第三者に説明するうえでも大切な計画ですが、これまであまり重視されてこなかったと思います。
「5年先のことが今からわかるか」。そういう経営者が時々いらっしゃるのには辟易します。しかし、明らかなことがあります。それは、あと5年間は65歳以上の高齢者が増えること。そして、その後は全ての世代にわたり人口減少が始まることです。都市計画の分野では、すでに「スマートシュリンク」を標ぼうし、コンパクト化により高齢者に優しいまちづくりを進めるとともに、居住エリアの縮小によって行政コストを削減していく方向にあります。加えて、エネルギーの自給も見据え始めています。旅行業も、グローバル戦略を掲げ、海外での旅行業進出により、国内旅行依存からの脱却を進めていくことでしょう。メーカーと同じです。
北海道では、節電の影響に背中を押され、「滞在型」へのシフトが始まりました。ニセコワイス寶亭留、あかん遊久の里鶴雅など、先見の明のある経営者の旅館は、脱・1泊2食を向き始めました。これは一過性ではありません。
収益計画を1泊2食前提とせず作ること。これが、旅館業に与えられた中期計画のポイントです。
少しでも滞在時間を長く、消費機会を多く、という方向性はまちづくりでも同じでしょう。そのために、暮らしやすいまちの整備はもとより、何度も滞在したくなるソフト作りと、それを企画する体制づくりが大切。広く浅くの旧来の観光協会型から、観光客との深く長い付き合いを創造する「まちづくり会社」型への転換も、この5年間に行うべきことでしょう。
この5年間には、実に多くの旅館が淘汰されると思いますが、仕方ありません。生きていくためには、旅館業に固執しなくともリセットして生きていけますし、もっと魅力的な事業もあるので頑張って欲しいと思います。
震災後、時代は大きくエコ・モードに舵を切りました。1泊2食の単価ダウンは、このまま永遠に続くでしょう。人口減少という自明の理を、どれだけ自らの経営計画に落とし込めるか。それが、生き残りのパスポートになることでしょう。