2011.07.17
7月1日、今年も石川県内のお菓子屋さんの店頭に「氷室饅頭」が並ぶ季節がやってきました。その昔、加賀藩が幕府に氷室の氷を献上した日にちなみ続けられるこの風習。県内の方々には馴染み深いことでしょう。この日、金沢に行けないものか。毎年、縁起ものの酒饅を目当てに旅を企むのが楽しみです。
饅頭好きだから甘党かといえばそうではなく、どちらかというと私は左党。
9月9日、重陽の節句。石川県内では、夏の間、樽の中で熟成され、まろやかさが増した日本酒、「ひやおろし」が一斉に解禁されます。一週間前に解禁された日本海の「底引き漁」で揚がった新鮮な甘エビやのどぐろをサカナに、今年の新酒をたしなむことが待ち遠しくてなりません。菊の節句ですから、菊のつく名前の酒蔵からでも買ってきましょうか。
11月、ずわいがにの解禁で日本海が賑わうのをよそ目に、11月下旬、私は長野県の伊那地方にこもります。なぜって、11月15日の狩猟解禁を境に出回る信州ジビエを求めて大鹿村の温泉にかけつけるから。鹿塩温泉から取れる珍しい山塩を振っていただく猪のグリルにしましょうか。それとも、雲海を眺めつつ入る赤石荘の露天風呂の湯上りに、地元の棚田米で醸した銘酒「おたまじゃくし・晩秋ひやおろし」を傾けつつ、新鮮な鹿刺しをいただきましょうか。
日本各地には、おいしい「解禁日」がごまんとあります。それも、オフシーズンと言われる季節に。
地元から門外不出の情報に、一人ひとりの旅の「ものがたり」が紡がれていきます。そんな旅の提案ができる地域こそが、これからの勝ち組となっていくはずです。ただ、全国各地、まだまだ「物語構成力」が足りませんが!
そんな地域のために、日本文化研究センターの白幡洋三郎先生を中心に、日本各地の「物語」を研究・発信するため、産官学の有志が集まり「ものがたり観光行動学会」が立ち上がりました。
第1回年次(全国)大会は10月15日(土)。尼崎で開催されます。物語構成力の強化に悩む全国の皆さん、この日尼崎に集まりませんか!
2011.07.17
大震災後、宿泊消費の形態ががらっと変わってしまったと感じるのは私だけでしょうか。
第一に、一般客の「脱・東北」(東北はエシカル・モード)。
地震・津波だけだったら、夏に持ち直したかもしれません。
しかし、原発の余波 (降り注いだ放射能による食糧汚染が最悪の事態を招いている) により、東北は「域内需要」で何とか持つ地域に変わってしまいました。 夏に動くはずの首都圏ファミリー層が、「1000円高速」の廃止 (私だったら東北道だけは残しますけどね) も相まって、白河の関を越えません。 それどころか、東日本太平洋岸の海からも、2~3割程度客が引いてしまった感があります。
しかし、大震災が生んだ消費があります。 それが「エシカル・ツーリズム」。 ボランティア・ツアーで東北を訪れる方々は今夏も後を絶ちません (特に女子が増えているような気が)。 今後も、ツアーを企画・運営するNPOの肩に東北観光の復興がかかっているといっても過言ではありません。 平泉を世界遺産にしてくれたユネスコをはじめ、通常の「観光セクター」以外のセクターが東北を支えています。 この新しい流れを、じわじわと観光需要に結びつけていくことが、今後の重要政策になると思います。 さあーっと引いていった人たち(外国人団体客・ツアー客)をまた引き寄せることばかりにお熱ではいけません。(原発問題あるうちは無理じゃね?) 今夏の大人の旅は、東北ボランティアツアー!(2011年夏の東北に行ったという良い思い出を)
第二に、全国的な「エコ・モード」。
「節電」の夏、よりによって予想通り暑くなりました。 暑い都市部を出ていきたい!という願いも予想通り。 これは、4~6月もそうだったのですが、旅行需要はそんなに衰えてはいません。この表は、旅館の「フロント会計システム」と言われる、予約データベースを全国200軒分まとめて集計したものです。 4~6月の予約推移を表したグラフですが、 昨年に比べて「予約が落ちているというわけではない」ようです。
しかし、「ネット予約会社」経由が直前に増えているのが、今年の特徴。 じゃらんとか楽天とかからの予約でしょう。
ところが、実際の旅館はというと…昨年に比べて「売上はダウン」というケースが多いように思えます。 すなわち「単価が大幅にダウン」しているのだと思います。 ネット予約は、「週末比率が高くて、かつ単価が低い」という特徴があるので、致し方ないのでしょうね。
すなわち、エコ・モードとは、「お金のエコ」という意味!
旅行には出るけど、限りなく「コスパのよい旅をしたい」と願っている消費者が多いということです。
言い換えれば、「人のカネ」で動く、いわゆる「法人をはじめとする男性のカネ需要」が減って、「自分のカネ」で動く層が増えていると言えます。 だからもう、「人を喜ばす」ための、会席料理は要らないんだってば!
北海道では、ニセコワイス寶亭留や、あかん遊久の里鶴雅といった、発想の進んだ経営者の皆さんは、この夏「素泊まりや1泊朝食」を打ち出し、「脱・1泊2食」を始めました。 夕食は、町に出たり、バーベキューをしたり、「夕食が自由に解放された」温泉リゾート滞在をしたいという生活者の願いがようやく伝わり始めました。
ちまたでも、うまいものを提供する店はいつも大繁盛。だけど、儲け主義の居酒屋は閑古鳥。 それが旅先にも波及してきているのだと思います。 見た目はきれいだけど、特徴のない、高い会席料理よりは、ガツン系だけど、地元のホンモノの食を食べたい。 そういうニーズがどんどん増えています。
そして、「エシカルモード」と「エコモード」が生んだのが、「民宿女子」(宿坊女子も含む)。 民宿といえば、設備も家庭的で、トイレも外、まあ安いだけ、と思われていたのは昔の話。 ホームステイみたいで、いいじゃない。 それに、地のものを使った料理が食べられるし、気楽でいい。 そんな「エシカル」慣れした、「エコ」な女子たちが、民宿に目をつけ始めたような気がします。
さて、今夏あたりから、民宿から目を離せなくなると思いますよ。