2010.12.30
2011年、旅館業界でヒットしそうなものを予測してみました。(2010年版はこちら)
エリア的には、新幹線開通効果から「南九州」「北東北・函館」あたりと、大河ドラマ(江~姫たちの戦国)効果で「長浜など近江地方」、年末にスカイツリーが竣工する「東京・下町」あたりが脚光を浴びそうですね。
●第5位 「旅館で結婚披露宴」
婚礼の世界では、近年「和風がえり」が進んでいます。 出雲大社参道の「竹野屋旅館」(歌手竹内まりやさんのご実家)、新那須温泉の「山水閣別邸回」、松本の「ヒカリヤ」(扉温泉明神館経営の古民家レストラン)。 旅館で披露宴をあげたいというカップルが静かに静かに増えているようです。 貸切できる披露宴、手の込んだ料理、温泉でのくつろぎ。 今年あたりからブレイクしそうです。
●第4位 「パワスポ温泉」
2010年、パワースポット効果で、伊勢神宮が過去最高の参拝者だったのをはじめ、神々しい杉並木の続く戸隠神社には前代未聞の旅行客があったようです。 温泉の分野でも、温泉に入ってパワーをもらえる一石二鳥型の温泉地が脚光を浴びそう。 パワスポ温泉で売り出し中の「弥彦温泉」(新潟)、神社拝殿下から上質の硫黄泉がわいている「紫尾温泉」(鹿児島)、ミッフィー絵馬がご利益を導く「こんぴら温泉」(香川)などなど。
●第3位 「日勝生加賀屋」
2010年12月、台湾の北投(べいとう)温泉に「日勝生加賀屋」が誕生しました。 台湾の不動産会社「日勝生(Radium)グループ」と日本の加賀屋の合弁です(上写真)。 台湾の方々が日本に来なくとも日本旅館の粋を味わえるという触れ込みですが、日本で新しい旅館の話題が乏しいことや格安航空会社の就航もあり、きっと日本人もこぞって泊まりにいくことでしょう。 北投温泉は、秋田の玉川温泉同様、北投石という岩盤から高濃度のラジウムが放出されるという都市型温泉。 海外の温泉もいいものです。
●第2位 「解禁料理」
世の中ではメリハリ消費が定着してきました。 お金をかけなくてもいいところではかけない。 けど、かけるときはかける。 旅館もその典型に。 一時は、露天風呂付き客室が流行りましたが、流行らせた世代も30代後半~40代に。 世の中のイイものがわかる世代になりました。 ボージョレ・ヌーヴォーにうつつを抜かすなんざご愛嬌。 ホンモノ世代は、日本国内の解禁に走る。 日本酒なら、「ひやおろし」(秋)。 食材なら、例えば、函館の「真イカ」(6月)、浜田の「ノドグロ」(8月)、日本海の底引き漁解禁であがる「カレイ」に「甘エビ」(9月)!
●第1位 「お気軽(格安)旅館」
今年の第一位は「お気軽旅館」。 単なるバイキングで格安にするだけではありません。 極力「ネット直予約」にこだわり営業コストを抑え、サービスもローコストで仲居サービスは廃止。 食事を付けなくてもよい「素泊まり」も解禁。 料理もコースから定食風に。 いつでも気軽に泊まりにいける(1万円未満の)、LCC(Low Cost Carrier)ならぬ「LCI(Low Cost Inn)」が増えていくでしょう。 温泉と部屋だけあれば、こってりサービスと、がっつり料理は要らないという消費者ニーズがようやく旅館業界に届いたようです。 旅館業も背に腹は代えられません。
2010.12.30
知らないということは幸せなことなのかもしれません。
旅館の全国データを用い、販路ごとに、週末・平日それぞれの販売比率を出してみました。平日販売比率が高いのは、募集型と呼ばれる広告主体の旅行会社。一方、週末販売比率が高いのは軒並みインターネット予約サイトでした。ここまでは誰もが想定できるでしょう。
次に、そのグラフに「平均単価」を加えてみました。すると、週末比率が高まるに従い上昇してはいくのですが、自社サイトをピークに下降していくのです。つまり、ネット予約サイトは週末比率が高いのに、単価が低いという結果に。さらに、一室当り宿泊人数、一件当り宿泊人数も、単価とほぼ同じカーブを描きました。
このことは何を表しているかというと、このままでは「ネット化すればするほど、経営悪化を招くおそれがある」ということ。誰も「需給バランス」を真剣に考えてこなかった結果です。政府の休日分散化も暗礁に乗り上げてしまいましたし。
それでもインターネットに期待をかけるのは「週末を安く売る以外の対策を誰も思いつかない」からでしょう。
それは「消費者ニーズだから」という理由もあるでしょう。ただ、どの旅館も変わり映えなく、単価でしか比べられない(コモディティ化している)から、そうなってしまうよねえ、というのが消費者の声なき声のような気がします。
抜本的な平日販売策を誰も考えていない。ただ、ネット上に渦巻く消費者の欲望に従い、週末を安く売るだけ。こんな市場なら、産業が衰退していってもおかしくありません。
コモディティ化の結末が「グルーポン」。90%オフ!という衝撃的な価格で投げ売りして消費者に誤解を与えるばかり。
その前に、「旅館の価値」を編集して、世に発信できないものでしょうか。例えば、少数のお客様だけご招待する「レアな地域食材を食べる会」などなど。やることはまだキリがなくあるように思えます。
私の新年のテーマは「観光イノベーション」の実践。井門観光研究所(イカケン)を作り、商品を提案していきたいと思います。
新年もよろしくお願いいたします。
2010.12.26
本日12月26日の朝日新聞朝刊の一面記事、「孤族の国の私たち」は、これからの日本をよく表していたと思います。
なんとなく「景気が悪く、売上が落ちる」と感じているのは、実は、「半永久的に、生産年齢人口が減少に転じた」年から(1995年~)であったり、「半永久的に、死亡者数が出生者数を上回った」年から(2007年~)だったりすることが背景にあると思えます。
記事によると、2020年には、「死亡数が出生数の”2倍”になる」と推計されていますが、私たちが乗っている「下りエスカレーターの国」でいかに生きていくかを考えることが求められています。 しかし、この「構造的な問題」に目を向ける方々は非常に少ないのが現状。 観光業界に至っては、目先や自分の生きる周囲のことにしか興味を持たず、絶望的な状況かもしれません。 しかし、ごく一部、視野が広く、先進的な発想を持つ方々がいるのも事実です。 そうした動きをもっと目立たせることが必要です。
2011年、小さな事務所を構えます。 その本意は「新しい動きをしようとする方々」の事務局機能を担おう という思いです。 これまで10年、旅館の事業再生に関わってきましたが、既に地域金融は「旅館業」を再生の対象業種から外しかかっているような気がします。 すなわち、旅館の事業再生(金融再生)はほぼ終了したと思えるのです。 次なる方策は、「生き残れる者だけでの脱却」です。
例えば、旅館が生き残るためには、「個性化」と「連携」が絶対に必要です。 一軒でできることには限界があります。 PRしようにも、コンテンツ的に不足しています。 トンガって、まとまること。 「まとまる」と言っても、意思が同じ者だけで十分であり、まとまることに多大な調整を要することはすべきではありません。 この時点で、現在の多くの地域の動きには無理があります。
2011年、新しい動きを始めていきたいと思います。 宣伝になりますが、1月21日に東京で開催される「繁盛する宿の仕組みを大解剖」という新春特別セミナーに出講します。 有料セミナーなので無理強いはできませんが、もしお時間があれば、どうぞお越しください。 その後、2月22日には観光庁のセミナーも予定しています。
今年もあと一週間。 よい年末をお過ごしください。