「沖縄」に行ってきました。
梅雨の最中とはいえ、一日中雨が降るというのは稀で、コバルトブルーの海と真っ青な空を満喫してきました。
今回の旅で、まず向かったのは、沖縄の中高生が演じる、現代版組踊 「肝高の阿麻和利」の公演(うるま市)。 おそらく、多くの方がご存じないと思いますが、ユネスコの世界未来遺産にも登録される、沖縄の中高生が演じる舞台で、中世の勝連城(世界遺産)を舞台にした沖縄の伝統的な組踊に、歌劇とダンスを取り入れたもの。 もともと、不登校や非行に走ろうとする「地域のこどもたちの居場所作り」をしようと、沖縄の民宿に生まれた演出家、平田大一さんが十年以上の歳月をかけ、地域の人たちと育ててきた取組みです。 今では、日本を超えて、世界に認められる大迫力かつ本格的なステージになりました。 「幻のチケット」と言われ、常に満席になる公演を観賞できたのはたいへんラッキーかつ噂通り素晴らしいものでした! (下の写真は、公演が終わって、駆け出した庭でアドリブを演じる子どもたち)
沖縄の伝統芸能には、本当に敬服します。
そして、次に向かったのが、「宮城島」。 阿麻和利公演のうるま市(勝連)から、海の中を走る「海中道路」を車で20分。 素朴な沖縄の村並みが残る農業・漁業の島です。
宮城島にお会いしに行ったのが、北海道出身・沖縄移住歴10年の 「宮崎綾子」さん。 地元の古民家を借りて修復し(ソーラーパネル付き!)、「自給自足」に近い生活 (月の生活費は2万円弱だとか) をしている30歳のサーファー。 ゆる~い、スローライフの実践者とはいえ、地域にとっては、一人住まいの「おばー」の家をまわってくれる事実上のホームヘルパーでもあり、不耕起農業に取り組む農家でもあり、地元NPOを通じて私のような外部の人間とコンタクトして、「新たな観光」を模索しようとするイノベーターでもあるのです。
自給自足のライフスタイルを少しだけ体験させていただき、村をまわり、食事もいただいてきました。 「地元産のモズクお好み焼き」+「パパイヤのサラダ」+「玄米と雑穀のごはん」+「沖縄の様々なハーブを入れたお茶」+「さとうきび絞りたてジュース」のランチ。 詳細は書ききれませんが、こうした「スローライフ」を実践したい、と夢見る人たちには、たいへん共感できるものだと思いました。 決して左翼的だったり退廃的だったりしない(全共闘世代あたりにはそう思う人もいるのでは?)、自然かつ明るく前向きな宮崎さんの生き方に「共感」し、自分の夢を一歩「具現化」したいと思っている人たちには、とっても素敵な旅のコンテンツになることでしょう。
現代の日本の観光では様々な問題が語られています。 その最大の課題は「シーズン・曜日の跛行性」。 つまり、オンシーズン・週末ばかりが混んで、オフ・平日はがらがらのため、観光費用は高止まり、雇用は不安定化し、サービスクオリティは劣化していく悪循環にはまっていることです。
その解決策として、「休暇の分散化」が目玉政策として発表されたり、「有給休暇の完全促進」が話題になったりしています。 国の政策としては十分理解できるものです。 それとともに、「泊食分離」による 「連泊しやすく、外国人も泊まりやすい旅館づくり」 (の第一歩としてのモデル宿泊約款改正) に取り組んだというニュースも、さきのブログで紹介しました。
しかし、これだけでは、ほとんど何も変わらないでしょう。 何が足りないかといえば・・・
そこに旅したいと思えるような 「魅力的なコンテンツ」 の情報や編集された商品がなさ過ぎ!なのです。
観光・旅行業界が考えるコンテンツとは、呆れるほど、いまだに「大量販売」できる素材。 これで、どう変わるのでしょうね。 国民だってバカではありません。 たとえ、休暇が増えたとしても、魅力ない古臭い国内旅行商品にお金をかけるくらいなら、近場で過ごしたり、帰省したり、海外旅行に行ったりするんじゃないでしょうか。
それを変える術こそが、業界で「着地型観光」と言われているスキーム。(多くの方が大量販売思考のままなので、正しく理解されていませんが)
その商材の大きな目的が、「共感」。 こういう人に会いたい。 共感したい。 そう思える商材を多数用意することが、着地型観光です。 そこには一度に大量客を受け入れできません。 どうしても、行きたい場合は、休んでまで行って欲しい・・・。 そういう商材を開発することなく、無理やり国民を「休ませよう」と考えるのは、「暴力」以外の何ものでもないのではないでしょうか!!!
わたしも、ここで発信しようとしたり、たとえお金をもらえなくても地域に行く目的は、そうしたコンテンツを応援したいから。 今回は、農水省の事業で交通費はいただけましたが、こうした取組みはむしろ観光庁がどんどんやって欲しいと願っています。
日本の観光に何が足りないのか。 それは、そうした今後の旅のコンテンツを発掘したり、編集したり、発信したりする、新しい旅のプロデューサー(人)です。 それが、観光を取り巻く既存の既得権者にできるかといえば、できません! なぜかというと、そうした発想をしたことがないからです。 そうした業界構造が、日本の観光が「閑古」になっていこうとする根源にあるのではないでしょうか。
日本には、感動・共感できる「素晴らしいコンテンツ」が山のように眠っています。 それをどう「観光」につなげるかが中期的な日本の観光の大きな課題になってくるでしょう。 まずは、着地型商品プロデューサー・エディターを育てることから。 その結果、10年発てば、日本の観光は変わっていくことでしょう。