<東祖谷の古民家「ちいおり」を飾った手作りリース>
街なかはクリスマスムード一色(例年よりちょっとさびしいかな。こんなに誰もタクシーに乗らないクリスマスも珍しいかも)。
昨夜は、都内のアイリッシュパブで、航空評論家の鳥海さん、渡辺旅行研究所の渡辺さん、実践インバウンドの小野さん、宿屋の親父さん、カプセルホテル経営者さん、某金融機関さん、某旅行会社さん、等と刺激的なトークライブ忘年会。 昼間は、「旅行新聞」の新春鼎談の収録。
いずれも、2010年の観光業界はどうなるか!に話題集中。
結果は、「国内は過去にないほど相当に厳しい...」で一致。 成田・羽田と立て続けに国際線発着枠が拡大。 インバウンド客の流入以上に、アジア各国へ日本人海外旅行客が出るだろうという予測。 一方で、地方旅館は相当危機的な状況。 「参院選が最優先」される年となるために、国債の追加発行や長期金利の1%割れ等、国際的にも日本の財政悪化が目立ってしまうおそれが高く、金融危機の火種さえ抱え、民間企業は自ら改革を進めなければ誰も救ってくれない状況に陥ると思われます。
一方で、デフレスパイラルがダッチロールを続け、消費者物価指数は続落。 1泊2食2万円の宿からは足が遠のき始めます。とはいえ、単価を一度落とせば2度と上がらないのを経験としてすりこまれている旅館は、単価ダウンにも慎重となり、資金ショートし倒産という宿がどうしても増えてしまうのは致し方ないことかと覚悟せざるを得ません。
旅館は、地方の店から物を仕入れ、地方の人たちを雇用し、地方経済を支える役割を担ってきました。 一方で、極限まで人を雇わず、中央での一括仕入れで効率運営を図る宿だけが生き残るのでしょうか。 いや、消費者の目はそこまで単純ではありません。 ホンモノを見極める目は日本の生活者には養われているはずです。
なんとか、今年を乗り切れば、トンネルの先の灯が見えると思います。 ただし、その時、旅館は進化している必要があります。
この厳しい時に必要なこと。 それは、「旅館の性格をとんがらせ、どんな性格なのか説明・発信すること」でしょう。 今一度、原点に戻り、旅館の性格を強化することです。
いらっしゃいませ、と大勢の仲居さんが頭を下げ徹底奉仕する旅館なら、「人生で最後に行きたい旅館」というコンセプトを (たとえ積極的に表に出さずとも) 強化すればよいのです。 余命幾ばくかの方をお連れした時、その人にとって、その光景がどんなにか心に焼きつくことでしょう。
とにかく、料理を大量に出さねば気が済まない旅館なら、「誰かをうんと喜ばせるために行く旅館」だと発信しましょう。 人を接待するとき、料理は華となり、仲居さんの接待が、相手を喜ばすことでしょう。
しかし、「疲れた時に、ひとり癒されにいきたい旅館」なら、食べ過ぎて不健康になりそうな大量料理ではいけません。 地産地消を徹底し、腹八分目で収まる量で、その後、ちょいと温泉街にも出たいくらいの料理がちょうどよいものです。
その全部を取りたいという大規模な旅館なら、泊食分離を徹底し、お部屋や料理を選択式にして、利用客の目的に応じて選んでもらう方式にしない限り、全部中途半端になるおそれがあります。
中国の方を呼ぼうとやっきになっていたりしますが、中国資本が旅館を買い、中国の方が自ら中国人が喜ぶ日本風旅館を作ってしまうことでしょう。 もちろん、それでよいと思います。 日本人だって同じことをやってきました。
そして、それぞれの性格の旅館でボランタリーチェーンを作るのです。 小規模和モダン旅館が集まった「一の宿倶楽部」のように。
ボランタリーチェーンごとに、料金をある程度わかりやすく統一します。 そう、格安旅館チェーンがやっているように。
日本人にとって物欲はすでに満たされています。 今、欲しているのは、精神的に満たされること。 旅館でその課題を解決してあげられないでしょうか。 日常的にふっと行きたくなる、行きつけの宿があれば、なんて嬉しいことでしょう。 行きつけの宿が薦めてくれる宿があれば、そこに行くでしょう。 そんなボランタリーチェーンを作るのです。
旅館組合とか、観光協会とか、一律で全員が同じことに取り組む組織は、防衛戦には適していても、攻めには弱い。 地域は、業種横断的な(農家も商店も旅館も市民も一緒になった)「まちづくり会社」が町おこしをすることになるでしょう。 防衛組織では無理です。
一方で、旅館は、いくつものボランタリーチェーンごとにホンモノ作りを徹底し、ファンを作っていく。 そんな観光経済になっていくことでしょう。 そうならない限り、死屍累々の山を築かざるを得ない。 まもなく、そんな長い氷のトンネルに入っていきます。
今年の、ちょっと例年より寂しいクリスマスを眺めつつ、そんな予感を感じていました。 トンネルに入っている間、生き残った者が二度と同じ轍を踏まないよう、この先のことを考える、そんな「進化」のための一年にできればと願っています。