2009.10.31
2010年、旅館業界でヒットしそうなものを予測してみました。(2009年版はこちら)
2010年は、円高が続き海外旅行が復活しそうですし、南アW杯&地デジ攻勢での「おこもり」傾向も見えているので、国内旅行は抜本的イノベーションを図らねば厳しい年になりそうです。そんな中で一筋の光明は…
●第5位 「ミッドナイト・チェックイン」
とにかく、「2日連続した休日がなければ一泊旅行ができない」というジレンマを乗り越えねば、日本の宿の利用者は減り続けるのは間違いありません。0泊2食ブームになりかけた09年に続き、これまで、発想は良いのだけど実践する宿が少なかった「深夜チェックイン+朝食+夕食」のスタイルもこれに続くことでしょう。忙しい現代人のために、「1日休みがあれば一泊旅行」!
●第4位 「四国・瀬戸内」
何だかんだと言って、大河ドラマの舞台は程度の差こそあれ、脚光を浴びます。2010年は「龍馬」。高知・桂浜を訪れる方は間違いなく増えるでしょう。静かに「お遍路」を巡る人々も増えていくでしょう。それと、静かに若者や文化人が訪れるであろうが、「瀬戸内国際芸術祭」。瀬戸内の島々と高松を舞台に、国際的アーティストがアートを繰り広げます。09年の大地の芸術祭(新潟)に続き、ブレイクしそうです!
●第3位 「専用旅館」
これまで、いろいろなお客様を区別せずに宿泊させていた旅館。そのため「我慢」して泊まっていた方も多いはず。そこで誕生するのが、専用旅館。「女性専用旅館」「全館禁煙旅館」「子連れ専用旅館」「シニア専用旅館」「ペット同伴専用旅館」。ここでも、オヤジは排除される運命なのか!快適に過ごしていただくために、選択と集中の流れができそうです。
●第2位 「朝食のおいしい宿」
旅館にとって、食事で差別化しようと思い、残された聖域が「朝食」。海苔に卵、というクラシックスタイルをあえて貫くか、調理人が手をかけ、見て楽しく、食べておいしい朝食&ブランチを提供するスタイルを生み出すか、いずれかの選択をする時が来たような気がします。地卵のオムレットの黄色。季節の野菜のすり流しスープの緑、赤。乳酸菌たっぷりの青魚の干物。つやつや光る新米ご飯。夕食以上に朝食を楽しみたい人が増えています。
●第1位 「温泉オフ会」
2010年、復活しそうなのが、仲間旅行。そう、旅館にとっては待ちに待ったグループ旅行の復活です。牽引するのは、50代と30代。50代は古い友人との同窓会。子育てが一段落したモダン世代が温泉に戻ってきます。集うのが好きな20-30代は、憂さ晴らしのオフ会。街を抜け出し、会社のメル友で、女子会で、サークル仲間で、「温泉でオフ会」のノリが流行りそう。お金はあまりかけられないので、近場の温泉旅館でね。
2009.10.28
地上63階のオープンエアレストラン”sirocco”(バンコク)。その空間には圧倒される。
先週、バンコクに行っておりました。日タイ経済提携協定の一環として、「旅館の事業モデル」を、タイのコミュニティツーリズムに応用するための事業計画作成支援が目的です。
旅館とは、「コミュニティの地産地消、雇用創出、福利厚生」等を通じて、たとえ小さくとも、地域に一定の経済循環を生む事業であり、外資系ホテルの進出により利潤を海外に持っていかれないための有望な事業モデルである、というのがタイの評価です。日本では、旅館は少し疲弊しているので少々くすぐったい表現ですが、実に勇気づけられます。
さて、「タイ流の旅館」の事業モデルは、ホテルと違い、利用者に向けて、「空間」よりも「時間」のリッチさを提案するモデルと考えています。
広い部屋、素晴らしい眺望、充実した施設。そうしたものはホテルにかなわない。旅館では、極力、チェックイン・アウトを自由にし、「滞在」しやすい施設にしよう。日本のように「日帰り」でも利用しやすい施設にしよう。そんな「旅館のメリット」を追求し、地域に根ざした宿泊施設ネットワークを目指すことになっています。
しかし一方、日本の旅館はどうでしょうか。どんどん「空間」の広さや豪華さに傾斜し、利用者の「時間」の都合を無視してきていないでしょうか。
利用者は、「何時にチェックインしたいかはその日任せにしたい」、「チェックアウトはできるだけ朝寝坊して遅くしたい」と思っている人も少なくないのではないでしょうか。数日間の休みがあれば、食事を自由にしてゆっくり滞在したいと思う人も多いのではないでしょうか。
そんな利用者の都合を無視し、徹底して旅館の都合で時間を決める。そして、利用者はホテルに逃げる。ホテルに逃げた利用者に「空間の豪華さ」で旅館を訴える。しかし負債は増える。どこかで歯車が狂ったように思えます。
出張中も、旅館の「0泊2食」に関する質問取材に追われました。関西で生まれた、宿泊しなくとも旅館を一日楽しめる「時間消費」の企画。忙しく、一日しか休みが取れない現代人にぴったりの商品だとお答えしています。
旅館とは、利用者本位の「時間」を提供してくれる宿泊施設であって欲しいと願っています。
2009.10.11
「綾部吉水」に泊まってきました。
京都円山公園と東京銀座で、小さな自然派の宿を展開する吉水の中川さんが、京都府綾部市のはずれの「水源の里」と呼ばれる里山に開業しました。
「ちょっと前の日本の暮らし」がコンセプト。茅葺の母屋には、大きな囲炉裏がふたつ。ここで食事をいただきます。客間が2つ。ひとつの客間には、ブランコが設えてあります。付近に住むIターン組、篠塚さんの力作です。そのほか、薪ボイラーで焚くお風呂が2つ。
隣接する木造2階建てには1階に客間が4つ。うち2つがトイレ付きです。2階はスタッフルーム。計6室の小さな宿。1泊10,500円(夕・朝食付き)です。
当面は、週末を中心とする部分営業で、営業日は「綾部吉水 暮らし宿」としてホームページに記載されています。ただし、グループで利用の際は、応相談で開けてくれます。
さて、吉水といえば、「自然の食材を使った懐かしい家庭料理」が売り。接客も飾らず自然流(わるく言えばアバウト)で、気兼ねなく過ごせる反面、初めての利用客を見ているとハラハラ、ドキドキ!。だって、普通の旅館と違って、気ままにアドリブで過ごす(何事も予定通りにはいかない) ことを愉しむ!?のが基本だからです。
だから、私がビールやコップを運んでいたら、スタッフと間違えられました。帰りまでには、宿泊客が全員スタッフ化してしまいますけどネ(笑)
館内には、時計、テレビ、客室冷蔵庫、アメニティ、等はありません。昔ながらの民宿のノリかもしれませんね。「ちょっと前の日本の暮らし」を事前に解釈してから訪ねましょう。
その代わり、晴れていれば、アドリブの里山散策、雨が降っていれば、アドリブの料理教室を開催してくれたりします。
今回泊まっていたのは、14名と満館。作家の先生、農業を学ぶ学生さん、グリーンツーリズムを追っかけてる自治体職員さん、元代議士の先生、都市計画の専門家さん、とまあお客さんも多士済々。最初は(当然皆さん初対面ですから)全員で2つの囲炉裏を囲んでも静かなものでしたが、だんだんと、夕食の豆乳鍋をつつき、地酒を酌み交わし、全員がスタッフ化していくにつれ、立場も忘れ、大宴会となって、夜もふけていくのでした。
なんだかんだと、海辺のカフカの話、日本の休暇制度の話、パッポン通りの話、などなどで盛り上がりながら、ときどき炭をおこしつつ、19時ころから何となく始まった夕食が終わったのが、深夜1時!
またの再会を約束して、皆さん帰路につくのでした。
皆さまも、この偶然と成り行きを愉しむ宿にぜひ一度! (里山は寒いので暖かくしてから行きましょう)